3.一秒書房の発生
中島は感動した。
「製本ってこんなに簡単だったのか!」
石田は涼しい顔。
「コピーして増やせば、おんなじ方法で、いくらで
も造れるよ。」
中島「すごい。もっと造ろう!」
石田「じゃあ、続きはきみに頼んだよ〜ん。」
中島「コツみたいのはあるの?」
石田「てきとうてきとう。」
本の作り方を“てきとう”に図解したメモ(右ページ参
照)と共に、製本作業はあっさりと中島に引き継がれた。
脱線した創作意欲の受け皿は、ついに見い出された。
“本”こそが、まさに“てきとう”。この錯乱した状況を
収拾するのにうってつけの媒体だったのだ。
「一秒書房」は始まった 。