2-27
14.窓の向こうの人
 佐藤ムツミと中島陽一は、同じ印刷会社でアルバイトを
していて知り合った。 98年11月 、天気のよい昼休み、弁当屋への道すがら、
佐藤は尋ねてきた。    「豆絵本、あたしにも作れるかなあ?」   「できるできる、簡単。つうか、やってみようよ。」  軽いノリで始まったが、翌日には、佐藤はもう、おはな
しの原形となるネタを思い付いていた。キャラクターを決
め、大まかな展開を打ち合わせ、2人のタッチを統一する
ために画材まで決めるという、合理的なスタートだった。
採用した素材はケント紙とミリペン。  2人は部署が違い、仕事場では中々会うことができない
ので、描いた絵を封筒に入れ、郵便で絵をやりとりした。
原画を書き終えたのは1年後の99年12月。製本が完了
したのは、さらに半年後の、2000年6月のことである。
 
2-28
 
 さいわい、2人とも気が長く、わりと飽きない質だった。
興味を持続し、地道に絵を描き、交わした書簡は22通に
及んだ。本文用紙に薄茶色の紙を使ったり、カラーコピー
を使って2色刷のように見せたりするなどのアイデアを出
し合いながら、完成のイメージを煮詰めていくのは心踊る
体験だった。    第12作「holiday」は、とてつもなく忙しい仕事に追わ
れつつ、のんびり作った1冊である。
   目次   
  人名事典をひらく  

  もういい?