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14.窓の向こうの人
佐藤ムツミと中島陽一は、同じ印刷会社でアルバイトを していて知り合った。
98年11月 、天気のよい昼休み、弁当屋への道すがら、 佐藤は尋ねてきた。
「豆絵本、あたしにも作れるかなあ?」
「できるできる、簡単。つうか、やってみようよ。」
軽いノリで始まったが、翌日には、佐藤はもう、おはな しの原形となるネタを思い付いていた。キャラクターを決 め、大まかな展開を打ち合わせ、2人のタッチを統一する ために画材まで決めるという、合理的なスタートだった。 採用した素材はケント紙とミリペン。
2人は部署が違い、仕事場では中々会うことができない ので、描いた絵を封筒に入れ、郵便で絵をやりとりした。 原画を書き終えたのは1年後の99年12月。製本が完了 したのは、さらに半年後の、2000年6月のことである。
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さいわい、2人とも気が長く、わりと飽きない質だった。 興味を持続し、地道に絵を描き、交わした書簡は22通に 及んだ。本文用紙に薄茶色の紙を使ったり、カラーコピー を使って2色刷のように見せたりするなどのアイデアを出 し合いながら、完成のイメージを煮詰めていくのは心踊る 体験だった。
第12作「holiday」は、とてつもなく忙しい仕事に追わ れつつ、のんびり作った1冊である。
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