2-13
6.海はどっちだ?
96年7月の終わり頃、版画研究室に、油絵科の 安田あや が遊びにやって来た。豆絵本の合作をやってみたいと言うの で、いつものMARUMANのF6判スケッチブックを取り 出す。交替で2ページ描いたところで、安田はいなくなって しまった。
中島はスケッチブックを部屋に持ち帰り、数日後、遊びに きた櫻井紀邦が、続きを描いた。翌日からスケッチブックは そのへんにいる学生たちの間を回されることになった。版画 研究室で作品を作っていた、大森(長嶋)裕子、石田祐佳が、 これに参加した。
ある者は軽い気持ちで後先考えずにペンを取り、ある者は 脈絡のない展開に頭を悩ませつつ絵を描き、夏休みも明けた 10月頃、スケッチブックはようやく埋まってきた。
このお話は、あまりに野方図な合作ぶりがたたってか、ラ ストの16場面目を描こうとする者が、しばらく現れなかっ た。ついにアニー岡本が、描きかけの絵としばらくにらめっ こしたのちに、一気呵成に締めくくりの絵を描いた。参加者 一同、やれやれと胸をなで下ろしたものである。
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表紙のデザインは、風邪ぎみの安田が熱にうかされ異常に 高揚した状態で描き上げた。よく見ると、絵本作りに参加し た6人の名前が、模様の中に溶け込むように描かれている。
11月10日、中島は製本家の河野有砂さんのお宅を尋ね、 豆本作りのこつを教わった。実際に、この「海にいきたい」 を使って製本を実演してもらい、かわいらしい花布の付け方 も知った。本格的で丁寧な作業に感動するとともに、今まで 聞きかじりだけでやってきた我流製本の無造作ぶりを、初め て見直すきっかけとなった。
とはいえ肝腎の内容の方は、「なんてわけのわからんおは なしなんだ!」と、作った本人達が口をそろえて言わざるを 得ない、困った本である。
第4作、「海にいきたい」は、このように、かろうじて完 成した実験作である。
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