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6.海はどっちだ?

 96年7月の終わり頃、版画研究室に、油絵科の 安田あや
が遊びにやって来た。豆絵本の合作をやってみたいと言うの
で、いつものMARUMANのF6判スケッチブックを取り
出す。交替で2ページ描いたところで、安田はいなくなって
しまった。  中島はスケッチブックを部屋に持ち帰り、数日後、遊びに
きた櫻井紀邦が、続きを描いた。翌日からスケッチブックは
そのへんにいる学生たちの間を回されることになった。版画
研究室で作品を作っていた、大森(長嶋)裕子石田祐佳が、
これに参加した。  ある者は軽い気持ちで後先考えずにペンを取り、ある者は
脈絡のない展開に頭を悩ませつつ絵を描き、夏休みも明けた
10月頃、スケッチブックはようやく埋まってきた。  このお話は、あまりに野方図な合作ぶりがたたってか、ラ
ストの16場面目を描こうとする者が、しばらく現れなかっ
た。ついにアニー岡本が、描きかけの絵としばらくにらめっ
こしたのちに、一気呵成に締めくくりの絵を描いた。参加者
一同、やれやれと胸をなで下ろしたものである。
 
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 表紙のデザインは、風邪ぎみの安田が熱にうかされ異常に
高揚した状態で描き上げた。よく見ると、絵本作りに参加し
た6人の名前が、模様の中に溶け込むように描かれている。  11月10日、中島は製本家の河野有砂さんのお宅を尋ね、
豆本作りのこつを教わった。実際に、この「海にいきたい」
を使って製本を実演してもらい、かわいらしい花布の付け方
も知った。本格的で丁寧な作業に感動するとともに、今まで
聞きかじりだけでやってきた我流製本の無造作ぶりを、初め
て見直すきっかけとなった。  とはいえ肝腎の内容の方は、「なんてわけのわからんおは
なしなんだ!」と、作った本人達が口をそろえて言わざるを
得ない、困った本である。  第4作、「海にいきたい」は、このように、かろうじて完
成した実験作である。
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